Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 146.773 caratteri · 294 schermate
彼はそれを払いのけるように頭をふった。そして、小声で、
「母さん――母さん――」
と呼んでみた。しかし母の顔はどうしてもはっきり浮かんで来ない。浮かんで来たと思った母の顔は、いつも「お芳さん」の幅の広い顔にかくれてぼやけていた。
彼は、もう、悲しいというよりは、何か恐ろしいような気になって来た。そして、手の甲でやけに眼をこすりながら立ち上ったが、一瞬、土饅頭に視線を落したあと、逃げるように墓地の入口に向かって走り出した。
*
夕飯には、お芳も台所に来て、みんなといっしょにちゃぶ台についた。ご馳走は大したこともなかったが、赤飯が炊いてあり、酢のものがついていた。次郎はお芳とならんで坐らされたが、始終むっつりしていた。
お芳の方は、はた目には物足りないほど平気な顔をしていた。強いて次郎にちやほやするのでもなく、さればといって、次郎のむっつりしているのを不快に思うようなふうもなかった。彼女は、ただ、自分の食べるものだけを食べてさえいればいい、といったふうに、はた目には見えた。
お祖母さんとお延とが、おりおり、気をきかして、
「次郎のお母さん、これいかが。