Classici giapponesi con furigana
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うたあんどん
歌行灯
泉 鏡花
Leggi 歌行灯 (うたあんどん) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.094 caratteri · 72 schermate
「出ないぜえ。」
は、ずるいな。……案ずるに我が家の門附を聞徳に、いざ、その段になった処で、件の(出ないぜ。)を極めてこまそ心積りを、唐突に頬被を突込まれて、大分狼狽えたものらしい。もっとも居合わした客はなかった。
門附は、澄まして、背後じめに戸を閉てながら、三味線を斜にずっと入って、
「あい、親方は出ずとも可いのさ。私の方で入るのだから。……ねえ、女房さん、そんなものじゃありませんかね。」
とちと笑声が交って聞えた。
女房は、これも現下の博多節に、うっかり気を取られて、釜前の湯気に朦として立っていた。……浅葱の襷、白い腕を、部厚な釜の蓋にちょっと載せたが、丸髷をがっくりさした、色の白い、歯を染めた中年増。この途端に颯と瞼を赤うしたが、竈の前を横ッちょに、かたかたと下駄の音で、亭主の膝を斜交いに、帳場の銭箱へがっちりと手を入れる。
「ああ、御心配には及びません。」
と門附は物優しく、
「串戯だ、強請んじゃありません。こっちが客だよ、客なんですよ。」
細長い土間の一方は、薄汚れた縦に六畳ばかりの市松畳、そこへ上れば坐れるのを、釜に近い、床几の上に、ト足を伸ばして、