Classici giapponesi con furigana
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したいろうそく
死体蝋燭
小酒井 不木
Leggi 死体蝋燭 (したいろうそく) di 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4917 caratteri · 10 schermate
宵から勢いを増した風は、海獣の飢えに吠ゆるような音をたてて、庫裡、本堂の棟をかすめ、大地を崩さんばかりの雨は、時々砂礫を投げつけるように戸を叩いた。縁板という縁板、柱という柱が、啜り泣くような声を発して、家体は宙に浮かんでいるかと思われるほど揺れた。
夏から秋へかけての暴風雨の特徴として、戸内の空気は息詰まるように蒸し暑かった。その蒸し暑さは一層人の神経をいらだたせて、暴風雨の物凄さを拡大した。だから、ことし十五になる小坊主の法信が、天井から落ちてくる煤に胆を冷やして、部屋の隅にちぢこまっているのも無理はなかった。
「法信!」
隣りの部屋から呼んだ和尚の声に、ぴりッと身体をふるわせて、あたかも、恐ろしい夢から覚めたかのように、彼はその眼を据えた。そうしてしばらくの間、返答することはできなかった。
「法信!」
一層大きな和尚の声が呼んだ。
「は、はい」
「お前、御苦労だが、いつものとおり、本堂の方を見まわって来てくれないか」
言われて彼はぎくりとして身をすくめた。常ならば気楽な二人住まいが、こうした時にはうらめしかった。この恐ろしい暴風雨の時に、どうして一人きり、戸締まりを見に出かけられよう。