Classici giapponesi con furigana
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ははのじょうきょう
母の上京
Leggi 母の上京 (ははのじょうきょう) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.655 caratteri · 33 schermate
不肖の子は特に可愛いといふ通り、迷惑をかけるたびにいつも負けるのは母親で、それがわが子の宿命ならば、善悪は措き、同じ宿命を共にしたいと考へる。
子供の頃は怖しい母であつたし、今も尚、怖れの外には母を思ひだすことのない夏川であつたが、それは彼の心に棲む母のことだ。現実の母は、叱る声も、怒る眼も在る代りには、だますこともでき、言ひくるめることもできる。ひどく云へば、悪事の加担をすゝめることもできるほど、子のために愚直な動物的な女であつた。
何事によらず、概ね人の怖れることは、ある極めて動物的な一瞬時なのである。死の如きものでも、さうである。そして夏川が母の上京に就て怖れることも、実は単に一瞬時で、怒る眼も、叱る声も、長く続いて変らぬといふ性質のものではない。だますことも、言ひくるめることもでき、会はない前よりも却つて事態を好転させる見込みすら有り得るのである。
心の中に住む母はさうはいかない。苦しみにつけ、悲しみにつけ、自らが己れを責める切なさの底で見る母は、だますことも、ごまかすこともできない母だ。母はそれだけでいゝではないか。夜汽車に喘いで辿りついた白髪頭の腰の曲つた老婆の姿をなんで見なければならないのか。