Classici giapponesi con furigana
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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
Leggi 母子叙情 (ぼしじょじょう) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 77.355 caratteri · 153 schermate
(山に来て二十日経ぬれどあたたかくわれをいたはる一樹だになし――娘時代のかの女の歌より)精神から見放しにされたまま、物足りなさに啜り泣いていた豊饒な肉体――かの女が規矩男のその肉体をまざまざ感じたその日、かの女は武蔵野へ規矩男を無断で置いて来た。それが最後で規矩男からかの女は訣れ去って来て仕舞ったのであった。
その日規矩男の書斎から出た二人は、また武蔵野の初夏近い午後をぶらぶら歩き出した。一度日が陰って暗澹としたあたりの景色になったが、それを最後に空は全体として明るくなって来た。木々の若芽の叢が、垂れた房々を擡げてほのかに揮発性の匂いを発散する。山中の小さい峠の下り坂のようになって来た小径は、赤土に湿りを帯びていて、かの女の履きものの踵を、程よい粘度で一足一足に吸い込んだ。
規矩男はまだシェストフについて云い続けていた。そして彼が衷心の感想を話す時のてれ隠しに、わざと昂然とした態度を採る。その癖で今日も彼独得の陰性を帯びた背の反らし方をして、右手を絶えずやけに振り廻していた。
「虚無でなければ無限絶対でないにしても嫋やかで魅力が無ければ僕たち人間には訴えて来ません」