Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はは

母

芥川 竜之介

Leggi 母 (はは) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8551 caratteri · 18 schermate

Aozora Bunko

「気の毒だな。」

男はもう一度ハムモックに、ゆらりと仰向けになりながら、同じ言葉を繰返した。男の頭のどこかには、未に瀕死の赤児が一人、小さい喘ぎを続けている。と思うとその喘ぎは、いつかまた泣き声に変ってしまう。雨の音の間を縫った、健康な赤児の泣き声に。――男はそう云う幻の中にも、妻の読む手紙に聴き入っていた。

「重々御察し下され度、それにつけてもいつぞや御許様に御眼にかかりし事など思い出され、あの頃はさぞかし御許様にも、――ああ、いや、いや。ほんとうに世の中はいやになってしまう。」

敏子は憂鬱な眼を挙げると、神経的に濃い眉をひそめた。が、一瞬の無言の後、鳥籠の文鳥を見るが早いか、嬉しそうに華奢な両手を拍った。

「ああ、好い事を思いついた! あの文鳥を放してやれば好いわ。」

「放してやる? あのお前の大事の鳥をか?」

「ええ、ええ、大事の鳥でもかまわなくってよ。お隣の赤さんのお追善ですもの。ほら、放鳥って云うでしょう。あの放鳥をして上げるんだわ。文鳥だってきっと喜んでよ。――私には手がとどかないかしら? とどかなかったら、あなた取って頂戴。」

槐の根もとに走り寄った敏子は、空気草履を爪立てながら、出来るだけ腕を伸ばして見た。