Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はは

母

芥川 竜之介

Leggi 母 (はは) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8551 caratteri · 18 schermate

Aozora Bunko

しかし籠を吊した枝には、容易に指さえとどこうとしない。文鳥は気でも違ったように、小さい翼をばたばたやる。その拍子にまた餌壺の黍も、鳥籠の外に散乱する。が、男は面白そうに、ただ敏子を眺めていた。反らせた喉、膨んだ胸、爪先に重みを支えた足、――そう云う妻の姿を眺めていた。

「取れないかしら?――取れないわ。」

敏子は足を爪立てたまま、くるりと夫の方へ向いた。

「取って頂戴よ。よう。」

「取れるものか? 踏み台でもすれば格別だが、――何もまた放すにしても、今直には限らないじゃないか?」

「だって今直に放したいんですもの、よう。取って頂戴よう。取って下さらなければいじめるわよ。よくって? ハムモックを解いてしまうわよ。――」

敏子は男を睨むようにした。が、眼にも唇にも、漲っているものは微笑である。しかもほとんど平静を失した、烈しい幸福の微笑である。男はこの時妻の微笑に、何か酷薄なものさえ感じた。日の光に煙った草木の奥に、いつも人間を見守っている、気味の悪い力に似たものさえ。

「莫迦な事をするなよ。――」

男は葉巻を投げ捨てながら、冗談のように妻を叱った。

「第一あの何とか云った、お隣の奥さんにもすまないじゃないか? あっちじゃ子供が死んだと云うのに、こっちじゃ笑ったり騒いだり、……」