Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もうりせんせい

毛利先生

芥川 竜之介

Leggi 毛利先生 (もうりせんせい) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.383 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

ただ、そこに閃いていたものは、例の如く何ものかを、常に哀願しているような、傷ましい目なざしだけであった。

自分は眼を伏せたまま、給仕の手から伝票を受けとると、黙ってカッフェの入口にある帳場の前へ勘定に行った。帳場には自分も顔馴染みの、髪を綺麗に分けた給仕頭が、退屈そうに控えている。

「あすこに英語を教えている人がいるだろう。あれはこのカッフェで頼んで教えて貰うのかね。」

自分は金を払いながら、こう尋ねると、給仕頭は戸口の往来を眺めたまま、つまらなそうな顔をして、こんな答を聞かせてくれた。

「何、頼んだ訳じゃありません。ただ、毎晩やって来ちゃ、ああやって、教えているんです。何でももう老朽の英語の先生だそうで、どこでも傭ってくれないんだって云いますから、大方暇つぶしに来るんでしょう。珈琲一杯で一晩中、坐りこまれるんですから、こっちじゃあんまり難有くもありません。」

これを聞くと共に自分の想像には、咄嗟に我毛利先生の知られざる何物かを哀願している、あの眼つきが浮んで来た。ああ、毛利先生。今こそ自分は先生を――先生の健気な人格を始めて髣髴し得たような心もちがする。