Classici giapponesi con furigana
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すいま
水魔
田中 貢太郎
Leggi 水魔 (すいま) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.727 caratteri · 24 schermate
と、時計が九時を打った。……もう九時になったか、と、時計の方へやった眼をまた入口の方へやった。青い帷は惰そうに垂れて、土室の中に漂うた酒と煙草の匂を吸うていた。
「山西さんどうしたの、今晩はいやにすましてるじゃないの」と唇の厚い給仕女が前の方から云った。
彼は給仕女を見たなりで何も云わなかった。彼は女の来ないのが待どおしかった。彼はももじりになって入口の方を見ていた。二人伴の客があったが女の姿は見えなかった。
時計は五分と過ぎ十分と過ぎた。……まだすぐは来ないかも判らないぞ、と、彼は思って来た。……もう一晩二晩待って来ないようなら、も一度投げ込みをやる必要があるぞ……。
小女のことがまた浮んだ。……今晩もいるかも判らない、そう思いだすと、小女に逢いたくなって来た。彼は急いで勘定をすまして戸外へ出た。戸外には昨夜のような月があった。
彼は月の下をぞろぞろと歩いている人の中を注意して、池の傍へ往った。伝法院の塀をはなれて池の縁へ出たところで、左の方から来る人群の中に、友禅模様の羽織を着た小女を見出した。彼は静にその方へ寄って往って、その顔をじっと見ながら微笑を送った。