Classici giapponesi con furigana
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ひょうが
氷河
黒島 伝治
Leggi 氷河 (ひょうが) di 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.824 caratteri · 42 schermate
「そうかね。」
栗本は、ほゝえんで見せた。彼は内地へ帰れることを羨んだ。その羨しさをかくそうとすると、微笑が、張り合いのぬけた淋しいものになる。それが不愉快なほど自分によく分った。
「なんか、ことづけはないかい?」
「ないようだ。」
「一と足さきに失敬できると思うたら、愉快でたまらんよ。」
そこにいる者は、もはや、除隊後のことを考えていた。彼等の胸にあるものは、内地の生活ばかりであった。いつか、持って来た慰問袋を開けていると、看護長がぶら/\病室へ這入ってきたことがある。慰問袋には一ツ/\何か異ったものが入れてあった。寒いところで着るための真綿がある。石鹸、手拭、カキモチが這入っている。高野山の絵葉書に十銭札を挟んである。……それが悉く内地の匂いに満ちていた。手拭には、どっかの村の肥料問屋のシルシが染めこまれてある。しかし、それはシベリヤで楽しむ内地の匂いにすぎなかった。戦友は、這入ってきた看護長を見ると、いきなり、その慰問袋から興味をなげ棄てた。
「看護長殿、福地、なんぼ恩給がつきます?」
栗本には思いがけないことだった。彼は開けさしの袋をベッドにおいたまゝボンやりしていた。