Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
彼は一家の後始末を親類に頼んで故郷を立ち退くよりほかはなかった。彼は江戸へ出て、何か生きてゆく方法を考えなければならなかった。彼はさらに百姓から商人に変らなければならなかった。それにしても急ぐことはない、まず暮れから正月は吉原でおもしろく遊んで、それから佐野屋の亭主とも相談して、なんとか相当の商売を見つけ出そうと考えていた。彼のふところには千両の金があった。
「旦那さま。まだお寝みなさらねえのでごぜえますかえ」
治六は寝返りを打って、衾の中から主人に声をかけた。
「天井でえらく鼠がさわぐので、眼が醒めてしまいました」と、彼はまた言った。
今までは気がつかなかったが、低い天井には鼠の駈けまわる音がおびただしく聞えた。次郎左衛門も無言で天井を仰いだ。
「旦那さま。おめえさま何か考えているんじゃごぜえませんかね。道中では毎晩よく眠らっしゃるのに、どうして今夜は寝ねえんだね。もう江戸へへえったから、ゆっくりと手足が伸ばせる筈だが……」と、治六は半分起き返って言った。「おめえさま。あしたの晩に吉原へ行くつもりかね」
「むむ。午前に髪月代でもして、午過ぎから行くつもりだ。