Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
よろけた綾衣は顔と顔とが触れ合うほどに、侍の胸のあたりへ倒れかかった。相手は侍、しかも粗相はこっちにある。それと気がついて綾鶴は平にあやまった。綾衣もにっこり笑って会釈した。侍も黙ってほほえんで行き過ぎた。人に押されて我知らずふた足三足あるき出してから、綾衣がふと見かえると、先きでもこっちを見返っているらしい、黒く動いている人ごみのあいだに、かの侍の白い顔が浮いて見えた。
「玉琴さんのお客ですよ」と、綾鶴がささやいた。綾衣はあんな侍客を見たことはないと思った。だんだん聞いてみると、刀を引っかけた侍ではない、もう一人の連れの侍がやはり大菱屋の客であるということが判った。
その晩、駿河屋から二人の客が送られて来た。それはさっきの侍で、一人は果たして玉琴の客であった。一人は初会で綾衣を指して来た。
不思議な御縁でおざんしたと、綾衣は笑って言った。今も昔も初会から苗字をあかす者はない。まして侍はお定まりの赤井御門守か何かで押し通すのが習いであったが、一方の連れが馴染みであるだけに、綾衣の客の素姓も容易に知れた。番町の旗本藤枝外記とすぐに判った。外記は同役に誘われて、今夜初めて吉原の草市を見物に入り込んだのであった。