Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
卑怯者め」
ふた口目には卑怯呼ばわりをする叔父のむかし気質を、外記は肚の中であざわらった。命を惜しむ卑怯者といちずに自分を認めるのは間違っている。勿論、自分は人のために死のうとは決して思わないが、自分のためならなんどきでも命を捨てて見せる。外記は死を恐れる卑怯者か臆病者か、いまに叔父にもよく判る時節があろうと、彼は口をむすんで再びなんにも言わなかった。
刀を鞘に納めたものの、五郎三郎はもうここに長居もできなかった。すぐに帰り支度をして、彼はお縫と三左衛門とに送られて出た。玄関を出るときに五郎三郎は二人にささやいて、外記は魂のぬけた奴、この上にどんな曲事を仕出来そうも知れない。お前たちも油断なく気をくばって、もし思案に能わぬことがあったら直ぐにおれのところへ知らせて来いと言った。
「おのれの心ひとつで一家一門、家来にまで苦労をかける。困った奴だ」
五郎三郎の眼には涙が浮かんだ。草履取りを連れて出てゆくその人のうしろ姿を、お縫も三左衛門も陰った顔でいつまでも見送っていた。
それから半ほども過ぎた。塀の内には蝉の声もいつか衰えて、初秋のうすい日影は霧につつまれたように暮れかかった。