Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
三
「何という逃げ下手な奴であろう。賛之丞の方では、あれで必死に居所を晦ましているつもりだろうが、この三五兵衛が討つ気だったら、今日までに、あれの命が三ツや四ツあったところで足らないだろう」
相手の気持を考えると、彼はひとりでおかしくなる。何かの場合には、賛之丞のおどろきや動悸までが、すぐ自分の胸にわかる。彼が寝てからの苦しみまで、枕元にいてのぞいているように、三五兵衛にはよくわかった。
彼は、それを楽しむように想像する。
そして、それが、三五兵衛の仇討だった。
三
三五兵衛に、この四、五年の孤独を味わせたのは、いうまでもなく村上賛之丞である。
もっとも、国元の紀州にいた時分から、三五兵衛の性格は今とあまり変化はない。和歌山の家中でも、ひとりの友をも持たなかった。妻をと、すすめる者がなかっただけでも、彼には人の寄りつけない、刃のような相が、その頃から備わっていたに違いない。
しかし、家庭には、彼のすきな一人の妹と、出仕御免になって余生を送っている父があった。――自分の美貌を利用しすぎる賛之丞が、そんな家庭をうかがったのは、彼として、生涯の禍いだった。
賛之丞は、彼の常套手段で、孝行で兄にも素直だったその妹を、家庭から走らした。