Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
おっ母、いつのまにこんな着物を」
ちちぶ縞の木綿袷を、百は、いそいそと身にひっかけて、
「お稲さん、行って来るぜ」
裏で、嬰児の洗いものを干していたお稲は、何もかも、分っているように、手拭かぶりの下に明るい笑くぼをみせて、
「はやく、帰って下さいね」
「あ。七日ばかり、留守をたのむぜ。おっ母をな」
「ええ、案じないで」
「おっ母は、鳥目だから、夕方はよけいに気をつけてやってくれ。こちょこちょと、台所へ、出ねえように」
きのうすでに、仕上げをすました十組の小柄を、卯黄木綿の端から巻いて、それを、腰帯のうえから、しっかりと背なかへ。
おしげと、お稲は、ふいご土間の外に立って見送っていた。――江戸といえば鼻の先、遠くはないが、それでも旅、七日の留守は、淋しかった。
百は、ふり顧って、すすきの中から、すすきの家へ、笠を振った。
江戸へつくと、百は、場末の木賃宿に泊りこんで、あくる日から、小柄の売口をさがしあるいた。――といっても、破門された体なので、刀屋や本阿弥すじへは、向けられない。
それに、かれの希望が、小柄二本ひと組で二十両、持ってきた十組を、二百両にして帰ろうというのであるから困難だ。