Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
家はねえでも、わしにゃ、子があるぞよ」
肉縁の血を相容れないべつな嬰児はおしげの肌をはなれて、泣きぬいていた。おしげは、あわてて、そばへ寄って、
「百、この子を、わしが背に、おぶせてくれい」
「お稲の畜生は?」
「…………」
「逃げたのか、おっ母」
「ほんとのこと話しても、ぬしゃ、どうもしねえかよ」
「だ、だれが、あんな阿女に、未練があるものか」
「じゃ、ぶちまける……おぬしが留守になってから、毎晩のようにこの裏へ、よび出しにくるお侍があるのじゃ。そして、明け方に帰ってくる」
「ウウム、何でもねえや、そんなこと。あの売女にゃ、ありそうなこった」
「そればかりじゃない、足しげく、金の催促にくる七兵衛さんとも、どうやら、このごろは、変な話しぶりがあるで、耳うるそうてならなんだ」
「人間じゃねえな。――そんな女の餓鬼をおっ母、よせやい」
「いや、そうでねえ」と、おしげは、かぶりを振って、
「わしが、育ててやらねば、この子は、どうなると思う。ふびんじゃ、わしは、負うてゆく。――それから、御先祖のお位牌だけを、わしの腰に」
百は、見まわして、
「おっ母、お位牌よりほかに、なんにも持ってゆく物はねえ」