Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
自分が墓をあばいたお千代後家の幽魂というものを。
あの淫蕩な後家によく似ている笑いかただ。死ぬ半月前まで、幾人もの村の男を、交る交る招き入れていたお干代後家の幽魂。
冷たい汗がすだれのように七の顔にながれた。あの世から洩れる火のように、かすかな光はまだそこに洩れていたが、いつか床の上の気配はしいんと死んだように静かになっていた。
前よりは遥かに小さなささやきがもれて来た。七は耳へ指を突っこんだ。そのくせ、そこを動くことは全く忘れて。
ざらざらと煤が襟元へこぼれたので、思わず耳の栓をぬくと、サアーッと突然に雨の音が外を走り通った。ひょいと見ると、白い霧が、床下の奥まで濛々とはいって来る。
雷が鳴った。
轟々と翔けている!
青い電光が大地の顔を見せた。
七は、どやされたように醒めて、転がるように、床下から這い出した。すだれのように雨垂れが打っている。真っ白な夕立だ。
土は持って帰れない。いや、そんなことは忘れてしまっている! 彼は尻をからげて、雨のすだれの裏を潜った。
裏のほうへ廻ると、水口の雨戸が五寸ほど隙いていた。ひょいと見ると、その下に、履物が二足ならんでいる。