Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
「何屋だい――老人は」
「どう見えますかの。町人には、相違ございませぬが」
「そうだな……。黒焼屋か」
「さすがに、女向きな所を仰っしゃる。だが、違います」
「薬屋でもなし、呉服屋でも」
「だんだんお近くなりますな。実は、その辺――繭仲買の銀六と申して、こ覧の通り、秤一本、腰にさしたのが飯の種です。出店は、諸国の桑ある所、住居は、繭の中とでもいいましょうか、いやもう、のん気な風来商売で、歩いてばかりおりまする」
「繭買か。なるほど」
「いやですぜ、顔を見て。――顔がさなぎに似ているなんぞは」
「人間のさなぎは、老人ばかりじゃねえ。俺なんぞも、若いさなぎの方だろうよ」
と、自嘲をうかべた。
「御謙遜で」
と、銀六老人は、首を振って、
「どうして、飯坂あたりの夜ごと日ごと、酒よし、女よしの、あのぶん流し振り、いやもう、恐れ入ったものでした」
「ひどく、感心するな」
「いたしますとも、真昼、北上川の温泉壺の中に、白い首と、旦那の首と、二つならべて、河鹿を聞いているなんざあ、言語道断」
「よくねえ老人だ。いつのまにか、俺の悪い所ばかりを、覗いていやがる」
「は、は、は、は。それからまだ――福島から来ていた後家殿を何して」