Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
髪は、たしか、結綿と覚えている。掛け布の緋の絞り鹿の子は、少し寝くずれた首すじに、濃むらさきの襟が余りにも似合っていたし、早熟な十九の男には、眼に痛いほど、蠱惑だった。
「美い女だ。鬼の娘にはなぜ生れたろう……」
雲霧は、蚊帳の外に、ぼっとして立っていた。――その年頃にはもうかなりな女の数を知っていた彼だから。
女は。
竦んだきりだった。
まるで、凍った花みたい。
恐怖にみちた眼を、蚊帳の隅から、じっと向けたまま、冷ややかな友禅の長襦袢を崩して、守るが如く、乳のあたりを、白い手でぎゅっと抱いていた。
(恐いかい?)
雲霧は、にやりと笑んでみせた。しかしそれは、かえって、彼女の極度な恐怖を刺戟した。ぴくっと、手を、蚊帳の裾へかけて、脱け出そうとする様子に、
(あッ、待ちねえ)
いきなり飛びかかると、娘は、籠の鶯が、小さい心臓へ水を浴びたように、ぱっと、向うの裾へ、逃げ屈んだ。
其方へ、廻ると、此方の隅へ逃げる。此方で捕まえようとすると彼方へ逃げる。――二、三度、繰返しているうちに、雲霧の血は、もう盲目的になり、
(騒ぐと、殺すぞッ)と、思わず一喝した。
手の匕首が、無意識に、蚊帳の吊り手をばらッと切って落した。