Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate

Aozora Bunko

と、呻いた。

「――俺ア、一生の算盤玉を、ケタ違いした。飛んでもねえ考え違いをやっていたんだ。死ぬんじゃなかった。死んでどうする! 義賊の何のといわれたところで、太閤様の墓にだって、五年も経ちゃあ、ペンペン草が生えるんだ」

眉は、焦だった。膝が、ひとりでに、がくがくと浮いた。

「それよりゃ、俺にゃ、することがあった。俺は、俺の生ませたあの子供を、決して俺のような人間にしちゃあならねえ。――けいず買いの佐渡幸に預けて置きゃ、行く末は知れている」

彼は、生命が惜しくなった。生きたいと悶えた。こん度は、ほんとに、本能的に、牢を破って出たくなった。――最後に迫った肉体は、刻々、もがきを増してくる。

けれど――もう遅い。

真剣に、そう思った時は、もう明日となった切迫である。重罪人のみを入れる伝馬五番棟の本牢だ。破ろうとしても、断じて、破れる堅固さではない。蔵六でもいればだが、牢番が変っていては、騙しも利かず、ことばを交わす手段もない。

一晩中、悪夢は、彼をなやませた。

いやな、鴉啼き――

夜が白むと、やがて、

「雲霧、お呼び出しだぞ」

と、彼は、牢役人や、同心や小者など、大勢の人々がさせる鉄鎖の音と共に、外へ曳き出された。