Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate

Aozora Bunko

と、梳き場へ腰を持ち上げて行ったものの、実は、治郎吉にとっては、後の方が都合がよかったのである。

仁吉はもう、鬢だらいの湯を代えて、下剃から剃刀をうけながら、

「旦那、江戸ですね」

「わかるかい」

「わかり過ぎまさあ」

「江戸の野郎はがさつだからね」

「なに、その歯切れのいいところですよ。上方の女が好くはずです。……何ですか、御見物かなにかで?」

「ま、そんなものさ。金比羅から、有馬にすこしばかり落着いて、御多分にもれない、上り大名の下り乞食」

「そういう乞食になら、あっしも、稀にゃなってみたい。有馬では、どこへお泊りで」

と、仁吉は、天井から、治郎吉の顔を見直していった。

この緒口に、お仙の話を匂わせてみようかと、治郎吉は、次のことばを喉まで出しかけたが、やっぱり、人がいては、まずい気がした。

――というのが、自分よりは、向うにとって、余り人聞きのいい懸合ではないからだった。お仙の話によると仁吉と彼女とは、腹ちがいの兄妹で、この兄貴は、かなり、極道者で通っている男らしいのである。

で、湯女奉公をしている彼女へも、常々、小銭の無心は珍しくなかったが、こんどは何かまとまった要り用があるとかで、守口の双葉屋という遊女屋から、お仙のからだを抵当に、百両ほど借りてしまった。