Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぬまち

沼地

芥川 竜之介

Leggi 沼地 (ぬまち) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1848 caratteri · 4 schermate

Aozora Bunko

その声に驚かされたのであろう。近くで画を見ていた二三人の見物が皆云い合せたようにこちらを見た。私はいよいよ不快になった。

「これは面白い。元来この画はね、会員の画じゃないのです。が、何しろ当人が口癖のようにここへ出す出すと云っていたものですから、遺族が審査員へ頼んで、やっとこの隅へ懸ける事になったのです。」

「遺族? じゃこの画を描いた人は死んでいるのですか。」

「死んでいるのです。もっとも生きている中から、死んだようなものでしたが。」

私の好奇心はいつか私の不快な感情より強くなっていた。

「どうして?」

「この画描きは余程前から気が違っていたのです。」

「この画を描いた時もですか。」

「勿論です。気違いででもなければ、誰がこんな色の画を描くものですか。それをあなたは傑作だと云って感心してお出でなさる。そこが大に面白いですね。」

記者はまた得意そうに、声を挙げて笑った。彼は私が私の不明を恥じるだろうと予測していたのであろう。あるいは一歩進めて、鑑賞上における彼自身の優越を私に印象させようと思っていたのかも知れない。しかし彼の期待は二つとも無駄になった。彼の話を聞くと共に、ほとんど厳粛にも近い感情が私の全精神に云いようのない波動を与えたからである。