Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はたのてい

波多野邸

豊島 与志雄

Leggi 波多野邸 (はたのてい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.194 caratteri · 45 schermate

Aozora Bunko

衣ずれの音がして、波多野房江が隣室から出て来た。彼女は縁先へは出ず、食卓の前の座布団に膝をおとし、両手を卓上に重ねて、うっとり思いに沈んだ。

二人とも黙っていた。小鳥の声がひとしきり高くなった。

吉村は立ち上り、室にはいって、房江と向い合いに坐りかけたが、俄に、身をずらせて、彼女の膝に顔を伏せてしまった。少しく白髪の交ったその髪の上に、彼女は片手をやった。それから静かに、彼の顔を挙げさせようとした。

彼は頭を振って、彼女の膝にまた顔を押しつけた。

「どうしたの。」と彼女は囁いた。

「なんだか……。」

「また、極りがわるいの。」

彼女は突然、彼の頭をかき抱いた。

「おかしな人ね、子供みたい。」

「だって……。」

「もういいのよ。なんでもいいの。ね、そうでしょう。」

彼女の腕がゆるむと、彼は静かに顔を挙げた。近々と彼女の顔があった。その細く閉じかけた眼の、厚ぼったい重い瞼がおもむろに持ち上がり、額に幾つもの皺をこさえ、瞳が輝きを含んで微笑んでいた。

何かが一変した感じだった。その厚ぼったい瞼と輝きを含んだ瞳、それから、額の皺としぼんだ乳房、両方が別々なものとなって吉村の眼に映った。