Classici giapponesi con furigana
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うみにいくるひとびと
海に生くる人々
葉山 嘉樹
Leggi 海に生くる人々 (うみにいくるひとびと) di 葉山 嘉樹 (はやまよしき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 161.305 caratteri · 321 schermate
子供がそれをねだっているであろう。「もうねんねするんです。ね、夜食べると、ポンポンいたいたですよ。サ、ねんね」と、母は今年三つになった子供を膝の上に抱き上げるだろう。そうして、かわいくてたまらぬといったふうに、子供の頬にキッスするだろう。そうして、夫と顔を見合わせてほほえむだろう。そして、「明日はまた随分沢山鳥が落ちてることでしょうね。こんなにしけるんだもの。鳥だって船だってかないませんわね」と、いって、火鉢から鉄瓶をおろして、茶でも入れるだろう。そして、子供に隠して、その父から一枚の煎餅を出してもらって「坊やはいい子ね、サ、お菓子」といって出し抜けに子供にそれを与えるだろう。
だのに、おれたちは、凍えるような風と、メスのような浪と、雪のように冷たい資本家や、氷のように冷酷な船長の下で、労働をしているんだ。おれは何だって船員になんぞなったんだろう。
ことに家持ちの下級船員はそうであった。彼らは、そうでなくてさえも、その家庭にたまらなくひきつけられているのに、暴化のときには、その心持ちは長い刑を言い渡された囚人が、その家族のことを身も心もやせ砕けるように恋い慕い、気づかうのと異なるところがなかった。