Classici giapponesi con furigana
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うみのししゃ
海の使者
泉 鏡花
Leggi 海の使者 (うみのししゃ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4811 caratteri · 10 schermate
生ある一物、不思議はないが、いや、快く戯れる。自在に動く。……が、底ともなく、中ほどともなく、上面ともなく、一条、流れの薄衣を被いで、ふらふら、ふらふら、……斜に伸びて流るるかと思えば、むっくり真直に頭を立てる、と見ると横になって、すいと通る。
時に、他に浮んだものはなんにもない。
この池を独り占め、得意の体で、目も耳もない所為か、熟と視める人の顔の映った上を、ふい、と勝手に泳いで通る、通る、と引き返してまた横切る。
それがまた思うばかりではなかった。実際、其処に踞んだ、胸の幅、唯、一尺ばかりの間を、故とらしく泳ぎ廻って、これ見よがしの、ぬっぺらぼう!
憎い気がする。
と膝を割って衝と手を突ッ込む、と水がさらさらと腕に搦んで、一来法師、さしつらりで、ついと退いた、影も溜らず。腕を伸ばしても届かぬ向こうで、くるりと廻る風して、澄ましてまた泳ぐ。
「此奴」
と思わず呟いて苦笑した。
「待てよ」
獲物を、と立って橋の詰へ寄って行く、とふわふわと着いて来て、板と蘆の根の行き逢った隅へ、足近く、ついと来たが、蟹の穴か、蘆の根か、ぶくぶく白泡が立ったのを、ひょい、と気なしに被ったらしい。