Classici giapponesi con furigana
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かいじんにいのる
海神に祈る
田中 貢太郎
Leggi 海神に祈る (かいじんにいのる) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.486 caratteri · 26 schermate
こうして犠牲に献りました私の生命は、速刻お召しくださいましても厭うところでございません」
権兵衛は一人で朝まで祈願をこめていた。朝になって室戸岬の沖あいから朝陽が杲杲と登りかけたところで、人夫たちが集まって来た。
人夫たちは左右の堰堤を伝って己の持場につこうとしていた。礁の方にかかっている五六十人ばかりの人夫は其処からおりるべく祭壇の近くへ来た。それと見て権兵衛は幔幕の一方を解いて姿をあらわした。人夫たちは甲冑の武者を見て驚きの眼をそばだてた。
「あ」
「何事じゃ」
「何人じゃ」
「彼の鎧武者は」
権兵衛は腰にさしている軍扇をさっと拡げた。それは赤い日の丸の扇であった。
「来い」
人夫たちは権兵衛と云う事を知ったので安心して傍へ寄った。権兵衛は凛とした顔をした。
「皆よく聞け、拙者は此の釜礁が割れないから、己の身を竜王様に献って、何時なんどき此の生命をお取りくだされてもかまいませんから、釜礁を一刻も早く取り除けるようにしてくだされと、昨夜の八時すぎから一睡もせずにお願をこめたから、其の方たちにはもうおかまいがない」
人夫たちの中に囁が起った。権兵衛は呼吸を調えた。