Classici giapponesi con furigana
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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
Leggi 海豹島 (あざらしとう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.311 caratteri · 48 schermate
左右の板壁によせて、二段になった蚕棚式の木の寝台が八つほど造り附けになり、はるか奥の突当りに裏口の扉が見える。その右手が炊事場になっているようなので、行って覗きこんでみたが、炊事道具や罐詰の空罐などが乱雑に投げだしてあるばかりで、そこにも人の姿はなかった。
部屋の中央に据えられた鋳鉄製の大煖炉の傍まで戻って、そこの床几に腰をかけたが、煖炉はすっかり冷え切っていて、寒さと佗しさを感じさせるのに役立つばかりである。すぐそばに薪が置いてあるが、忌々しくて火を燃しつける気にもならない。歯の根を顫わせながら狭山良吉が帰って来るのを待っていたが、いつまでたっても姿を見せない。
一、私は寒気と疲労と空腹のために不機嫌になり、腕を組んでむずかしい顔をしていると、それから小一時間ほどたってから、裏口の方に跛をひくような重い足音がきこえ、ゆっくりと扉を開けて誰か入ってきた。薄暗がりをすかして眺めると、奥の入口一杯にはだかって大きな男が立っている。私は焦れ切っていたところだったのでいきなり、
「貴様、狭山か」と声をかけたが、こちらを見ながら、うっそりとしているばかりで返事もしない。