Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かいなんき

海難記

久生 十蘭

Leggi 海難記 (かいなんき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.628 caratteri · 56 schermate

Aozora Bunko

ほかの十三人は、あるものは帆柱の下にうずくまり、あるものは俯伏せになり、救助の船が来たことが、この世の最大の不幸でもあるかのように、手で顔を蔽い、痛ましいかぎりの呻き声をあげていた。ついさっき望遠鏡のレンズにうつった歓喜に満ちた姿は、錯覚だったのか夢だったのかと、ふと思い迷ったほどであった。

サヴィニ軍医補を先頭にして、一人ずつ短艇に移乗を開始したが、そのうちにロザーシュ少尉が、「おねがいだ。ぼくを筏に残しておいてくれ」と言いながらはげしく泣きだした。すると、それにつれて、木工長のラヴィエット、クレーレ少尉、シャルロォ兵曹長、クゥルタード砲術長、シャルル黒人兵の五人がめざましい昂揚状態をしめしながら筏の上に這い戻りはじめた。ロザーシュ少尉を含めたこの六人は、その後、サン=ルイ島の英国病院で頑強に拒食をつづけ、六人が六人とも餓死してしまったが、この一瞬の動作は、終生忘れられぬほどの感動的な観物で、私の気持を掻きみだし、なんともつかぬ思いに沈ませた。

この筏の上でなにがあったのだろう。八等勤務の黒人輸卒を除き、ここにいる十四人だけが武器を持っていた。