Classici giapponesi con furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Leggi 海難記 (かいなんき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.628 caratteri · 56 schermate
大蒜の入った小さな袋が帆布の間に挾まっていた。兵隊達は血みどろになってひとかけらの大蒜を奪いあった。
ある兵は釣竿の鈎で鱶を釣ることを思いついたが、鱶が噛みつくといっぺんに伸びて鈎の役をしなかった。兵隊達はみな黙りこみ、筏の後部に蹲まって食べられるものはないかと熱心に考えた。
八日(第四日目)の夕方、飛魚の群がやってきて筏の下へ入りこんだ。兵隊達は大騒ぎをして二百尾ばかりつかまえた。取るより早く腹を裂いて白子をすすり、魚肉は鱗もとらずに端から鵜のみにした。
そういう僥倖は二度とは訪れず、将校も兵隊も胃の緊縮に苦しんで帯革や靴の敷皮を噛み、尿をとって飲んだ。ある兵のは薄くて飲みやすかったが、ある兵のは濃くて辛辣な味がし、どうしても飲めなかった。飲める尿は小鉢で受け、早くさめるように海水に漬けておいたが、番をしていないと盗まれるので油断がならなかった。
九日(第五日目)とうとう死体を食いだした。コレアールの「海難記」によれば、最初に誘惑に負けたのはシャルルという黒人兵の輸卒だったことになっている。
シャルルは筏の上に残っていた前夜の犠牲者の体から、こっそりと肉を切りとったのである。