Classici giapponesi con furigana
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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Leggi 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.649 caratteri · 56 schermate
不幸なことが起きたからすぐ来て欲しいという文面であった。
ボナパルト街の古めかしい一郭にある袋小路の行きどまりの拱門を入り、教えられたように石内庭の端にある穴から地下へ降りると、むかし葡萄酒置場だったらしい暗い湿った石壁の部屋の机の上に裸蝋燭を一本立て、ジャンヌが両手で顔を蔽って椅子の上にうずくまっていた。奥の壁に寄せて大ぶりな寝台があり、その後部にあたる天井の折釘に繩をかけ、ジョルジュが見事に縊死を遂げていた。
レミュは寝台の端に掛けて無言のままひかえていると、やがてジャンヌが顔をあげていった。
「ジョルジュは巴里に初雪が降ると、ひどく弱って寝こんでしまい、短いときで半月、長ければ二月以上も起きあがれないのです。メランコリックの原因は私によくわかっているのですけど、心の病気なので、傍にいて手を握っていてやるほかどうすることも出来ませんのです。いつかはこんなことになるのではないかと心配していましたが、私の予感があたりました。弟にとって、生きて行くにはすこし辛すぎる人生だったのでしょうけど」
そのとき三人ばかりの酔漢が石段の踏面で乱れた靴音をたてながら降りて来、ジャンヌの名を呼びながらはげしく扉を叩いた。