Classici giapponesi con furigana
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とせんば
渡舟場
豊島 与志雄
Leggi 渡舟場 (とせんば) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.509 caratteri · 24 schermate
私は抱きつかんばかりに喜んで迎える筈だった。ところが、どうしたのだろう、口も利けず、ただ涙ぐんでしまった。その涙は、嬉し涙とはちがっていた。もっと複雑な変梃なもので、悲しみさえ含まっていた。軍人である兄さんを通して、わが国の敗戦をじかに感じたからでもない。戦争そのものは私にとっては、ほんとは縁遠いことのように思われたのだから。そんなことより、なにかもっと大切なものがあるようだった。それが何であるかは、今もまだはっきり分らないけれど、ただ、人間というものに、直接に繋がりのあることのような気がする。兄さんを見た時、その大切なものがはっと胸に蘇ってき、胸を衝いて、私はへんに悲しかったのである。
大切なものが、長い間踏みにじられていた、忘れられようとしていた。今でもそうではあるまいか。それがへんに悲しいのである。
そうした悲しみに、私は囚えられているらしい。だから、川原浩一さんのあの言葉を聞いても、私は顔を赤らめもせず、殆んど胸のときめきも感ぜず、ただ俯向いてしまった。も少しじっとしていたら、私は涙を落したかも知れない。
今朝、庭に立って、空模様を見ていると、浩一さんがやって来た。