Classici giapponesi con furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Leggi 湖畔亭事件 (こはんていじけん) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 69.335 caratteri · 137 schermate
十
ナニ、宿の者に告げさえすれば気がすむのですけれど、覗き眼鏡の弱味があるものですから、それもならず、つまらぬ苦労をしたことです。
十
翌朝、夜があけて、階下が騒がしくなると、私はやっと少しばかり元気づいて、顔でも洗ったら気が変るかも知れないと、タオルを持って階段を下り、洗面所へ行きました。それが丁度例の浴場の側にあるので、もう一度朝の光で脱衣場を検べて見ましたが、やっぱり何の変ったこともありません。
洗面を済せて部屋に帰ると、私は湖水に面した障子をあけて、腹一ぱいに朝の空気を吸い込みました。何という晴々とした景色でしょう。見渡す限りの湖面には、縮緬の様な小波が立って、山の端を上った日光が、チカチカと白く反射しています。背景には、日蔭の山肌が、壮大な陰影をたたんで、その黒と、湖面の銀と、そして山と湖との境に流れる、一抹の朝霞。長い滞在の間にも、朝寝坊の私は、珍しくそんな景色を見たのでした。その景色に比べては、私の夜来の恐怖が何とむさくろしく見えたことでありましょう。
「お早いのでございますね」
うしろに、冷かす様な女の声がして、そこへ朝のお膳が運ばれました。