Classici giapponesi con furigana
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こはん
湖畔
久生 十蘭
Leggi 湖畔 (こはん) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.180 caratteri · 47 schermate
「なにしろ、水に漬っておりましたことで、大分と御相好が変っておりまするが、然し、なんと申しましても、これは御内室の御遺骸であるべきはずなので御座いまして、間も無く、検視官も来臨いたしますが、その前になにか特徴を御発見下さいまして、閣下の御認案を頂きたいので」
すると高木は、叱責するような口調で、
「なにを下らん、認める認めンもないじゃないか。奥様の御遺骸でなくて、一体誰の死体だと言うんだ」
と蒼くなって捲したてた。
俺は高木を怒鳴りつけてやろうと思ったが、怒鳴るべき言葉が見当らない。どこの乞食の果てか知れぬ、こんな見苦しい死骸を背負いこむ位いなら、いっそ事実を公表したほうが優しなので、茶番じみた愁傷を尻眼にかけ、
「オイ、俺は陶を殺しはせぬヨ。陶は三島の尼寺にいるンだ」
と言って退けたら、さぞ清々するだろうと考えていた。
なるほど、それは痛快であろうも、それを言って退けると、生優しいことではすまなくなる。不実の申述をして裁判を進行結審せしめた廉で、違警罪に問われて監獄に繋がれねばならない。これこそは法に於ける嗤うべき遺漏の一つだが、殺したと虚偽の申述して無罪になった俺が、殺さぬと真実の申述をすれば、かえって有罪になるのだ。