Classici giapponesi con furigana
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ためいきのへや
溜息の部屋
山本 周五郎
Leggi 溜息の部屋 (ためいきのへや) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7369 caratteri · 15 schermate
朝、いつものように出勤して、楽屋へ入って来た爺さんは、脚の欠けた喫煙卓子の上に、赤い花をした一輪差の花瓶をみつけてまず驚かされた。壁には新しく――とくに図案的な柄の――映画ポスタアが何枚も貼られ、入口には厳しい文字で『土足厳禁※(感嘆符二つ、1-8-75)』と書いた紙が、綺麗に掃清められた床を見下していた。炉の中にはもはや一本の煙草の吸殻もなく、さらに笑うべきは、三升も入ろうという大きな湯沸しが、何年もの錆を磨き落されていかにも気羞かしげに、真鍮色の光を放っていたことである。
この現象については誰も一言も触れようとしなかったが、ともあれ昨日までのよどみきった退屈なこの部屋の面貌はまるで一変して、そこには不規則ながら整頓ができ、微かながらテンポと調和とが現れはじめた。しかしさらに驚くべきことは午後になってから、その夜うたう歌をオーケストラと打合せるために、根来八千代が舞台へ立ったときのできごとである。
客の入っていないがらんとした小屋の中に、根来八千代のうたうソルベイジの唄の第一節が終って、第二節にかかろうとしたとき、ファスト・ヴァイオリンを弾いていた安土竜太郎はふいに指揮台へ上った。