Classici giapponesi con furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Leggi 澪標・落日の光景 (みおつくし) di 外村 繁 (とのむらしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.889 caratteri · 268 schermate
午後、私は外出をした。どんな天気であったか、どんな風景が目に映ったか、何も覚えていない。ただ帰ってみて、妻の意識が回復しているか、いないか、を初めて行き違った人が男か女かとか、電車の番号が奇数か偶数かとか、最後に追い抜いた人が大人か子供かとか、そんないろんなことに賭けてみたりするのだった。
しかし、妻はやはり昏昏と眠っていた。留守中に小野医師の来診があった由を長男が告げた。
「父さんが外出などしては、いけませんて」
「へえ、そんなに悪いのかな」
「そうらしいです。いつ、どんなことが起こるかも知れないそうです」
「そうか」
「明日、滋養物を口から注入されるそうです。卵と牛乳を用意しておくように、言われました」
「卵と牛乳とね。味など判らんだろうね」
「そんなもの、判りませんよ」
「そうか」
私は妻の枕許に腕を組んで、坐り込んでしまった。いかにも腕を拱く、とはこのことと思われた。
夕方近く、妻は夥しく発汗した。私は小野医師の許しを得て、長男に手伝わせて、妻の着物を換えた。
妻の様子が幾分変ったと気づいたのは、私が例の晩酌のコップを持って、妻の枕許に坐ったときであった。