Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Leggi 澪標・落日の光景 (みおつくし) di 外村 繁 (とのむらしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.889 caratteri · 268 schermate

Aozora Bunko

しかし幾重にも巻いた腹帯の上からは、私の掌に何の感覚も伝えなかったのも当然であろう。が、とく子はいかにも満足そうである。胎動が既に母であることを知覚させたのか。そうしてその肉体の自覚が、自然に母としての感情も育てつつあるのか、と私は思う。しかし私の父としての感情は空白に等しい。男というものがひどく無責任なようでもある。しかしまたおいてけぼりを喰わされたようでもある。

ある夜、遅く帰って来たとく子が、部屋へ入るなり言った。

「今日はひどい目に会いましたわ」

同僚の財布が無くなり、警察署に連行され、取調を受けたという。

「休も調べられたの」

「ううん、帯を取っただけ」

しかしとく子の様子は少し普通でない。とく子は帯を解くと、いつになく荒荒しく押入の襖を開き、蒲団を敷き始める。私はそんなとく子を見上げて言う。

「どうしたんだ」

「寒いわ。寝ましょうよ」

いきなりとく子が電灯を消した。

床に入ると、とく子は体を私にすりよせて来る。

「どうしたんだい。裸にでもされたんじゃないの」

「そんなこと、どうでもよい。早う」

とく子は自分から腹帯を取り、ひどく昂奮している。こんなことは初めての経験である。