Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとり

火の鳥

太宰 治

Leggi 火の鳥 (ひのとり) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.740 caratteri · 76 schermate

Aozora Bunko

「誰にかけたか知ってるね?」

うなずいた。

「そいつは?」

「わかい人でした。」

「名前さ。」

「存じません。」

紳士たちの私語が、ひそひそ室内に充満した。

「まあ、いい。これからすぐ警視庁へ来てもらう。歩けないことは、あるまい。」

自動車に乗せられ、窓からちまたを眺めると、人は、寒そうに肩をすくめて、いそがしそうに歩いていた。ああ、生きている人が、たくさん在るのだ、と思った。

留置場へ入れられて、三日、そのまま、ほって置かれた。四日目の朝、調室に呼ばれて、

「やあ、君は、なんにも知らんのだねえ。ばかばかしい。かえってもよろしい。」

「はあ。」

「帰って、よろしい。これからは、気をつけろ。まともに暮すのだぞ。」

ふらふら調室から出ると、暗い廊下に、あの青年が立っていた。

さちよは少し笑いかけて、そのまま泣き出し、青年の胸に身を投げた。

「かえりましょう。僕には、なんのことやら、わけがわかりません。」

この人だ。あの昏睡のときの、おぼろげな記憶がよみがえって来た。あのとき私は、この人に、しっかり抱かれていた。うなずいて、つと青年の胸から離れた。

外へ出て、日のひかりが、まばゆかった。