Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとり

火の鳥

太宰 治

Leggi 火の鳥 (ひのとり) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.740 caratteri · 76 schermate

Aozora Bunko

「あなた、お金ある?」押入れのまえに、ぼんやり立ったままで、さちよは、そんなことを呟いた。

「あたし、もう、いやになった。あなたを相手に、こんなところで話をしていると、死ぬるくらいに東京が恋しい。あなたが悪いのよ。あたしの愛情が、どうのこうのと、きざに、あたしをいじくり廻すものだから、あたし、いいあんばいに忘れていた。あたしの不幸、あたしの汚なさ、あたしの無力、みんな一時に思い出しちゃった。東京は、いいわね。あたしより、もっと不幸な人が、もっと恥ずかしい人が、お互い説教しないで、笑いながら生きているのだもの。あたし、まだ、十九よ。あきらめ切ったエゴの中で、とても、冷く生きて居れない。」

「脱走する気だね。」

「でも、あたし、お金がないの。」

三木は、ちらと卑しく笑い、そのまま頭をたれて考えた。ずいぶん大袈裟な永い思案の素振りであった。ふと顔をあげて、

「十円あげよう。」ほとんど怒っているような口調で、「君は、ばかだ。僕は、ずいぶん、あなたを高く愛して来た。あなたは、それを知らない。僕には、あなたの、ちょっとした足音にもびくついて、こそこそ押入れに隠れるような、そんなあさましい恰好を、とても、だまって見て居れない。