Classici giapponesi con furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Leggi 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.705 caratteri · 173 schermate
」
一同は、急に声を忍ばせて、
「しかし、えらい変りようじゃなあ。あれほど眉目秀麗だった伴大次郎が、今はまるで鬼の面と言ってもよい。」
「山から帰って来られて初めて見たとき、おれは、化物ではないかと思ったぞ。」
「声が高いぞ。それが伴先生のお耳へ入ったら、貴様の首は胴へつながっておるまい。」
「いや、化物にしろ何にしろ、あの千浪さまを妻にして、これだけの道場を承け継いで見れば、決して悪い気持ちはすまい。」
「ところが、そのお嬢様と先生との間が、うまくいっておらぬのだ。」
「それはまた、どういうわけで――。」
「顔がああなってからの、先生のひがみだろうと思うのだが、かようになった大次郎を、そなたはまだ大切に思うか、慕っておるかと言って、毎日のように千浪さまを責めるのだ。このごろの千浪さまは、なみだの乾くおりもなく、まことにお気の毒な様子だ。」
「が、大次郎先生のお身になってみれば、それも無理がないのう。」
「ほら、聞えるだろう。かすかに、千浪さまの泣き声が――ああまた、無理難題を持ち出されて、困っておられるのだ。」
じっさい、あたりを憚る低い啜り泣きの声が、廊下つづきの母家のほうから、あるかなしに伝わり聞えて来るのだ。