Classici giapponesi con furigana
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ちちのはか
父の墓
岡本 綺堂
Leggi 父の墓 (ちちのはか) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2513 caratteri · 5 schermate
都は花落ちて、春漸く暮れなんとする四月二十日、森青く雲青く草青く、見渡すかぎり蒼茫たる青山の共同墓地に入りて、わか葉の扇骨木籬まだ新らしく、墓標の墨の痕乾きもあえぬ父の墓前に跪きぬ。父はこの月の七日、春雨さむき朝、逝水落花のあわれを示し給いて、おなじく九日の曇れる朝、季叔の墓碑と相隣れる処を長えに住むべき家と定め給いつ。数うれば早し、きょうはその二七日なり。
初七日に詣でし折には、半破れたる白張の提灯さびしく立ちて、生花の桜の色なく萎めるを見たりしが、それもこれも今日は残なく取捨られつ、ただ白木の位牌と香炉のみありのままに据えてあり。この位牌は過ぎし九日送葬の朝、わが痩せたる手に捧げ来りてここに置据えたるもの、今や重ねてこれを見て我はそも何とかいわん、胸先ず塞がりて墓標の前に跼まれば、父が世に在りし頃親しく往来せし二、三の人、きょうも我より先に詣で来りて、山吹の黄なる一枝を手向けて去りたる所志しみじみ嬉しく、われも携え来りし紫の草花に水と涙をそそぎて捧げぬ。きのうの春雨の名残にや、父の墓標も濡れて在しき。
父は五人兄弟の第三人にして、前後四人は已に世を去りぬ、随って我も四人の叔を失いぬ。