Classici giapponesi con furigana
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ちちすぎやましげまるをかたる
父杉山茂丸を語る
夢野 久作
Leggi 父杉山茂丸を語る (ちちすぎやましげまるをかたる) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.127 caratteri · 25 schermate
左の肩へ離れて一ツ在るのが一番大きかったが、その一つ一つに一本宛、長い毛がチリチリと曲って生えているのが大変に珍らしかったので、陸に上ってから繰返し繰返し引っぱった。
「痛いぞ痛いぞ。ウフフフ……」
と父が笑った。
父は九歳の時に遠賀郡の芦屋で、お祖父様の夜網打ちの艫櫓を押したというから、相当水泳が上手であったらしい。那珂川の洲口といえば、今でも海水、河水の交会する、三角波の重畳した難コースで、岸の上から見てもゾッとするのに、負ぶさってる私は怖くも何とも感じなかった。些くとも父の肩から上と私の背中だけは水面上に出ていたと思う。
その中に私等一家はイヨイヨ貧窮して来て、お祖父様も花鳥風月を友とする事が出来なくなられたらしい。お祖母様と、モウ七歳になっていた私を連れて二日市に移住し、漢学の塾を開かれた一方に、母は亡弟峻を抱いて市内柳原に住み、相変らず足袋の底と、軍隊の襯衣に親しんだ。
父は帰って来る都度に、先ず両親を訪い、次いで母と弟を省みた。
二日市の橋元屋という旅館の裏に住んでいる時、突然に父が帰って来て、小さな錻力のポンプを呉れた時の嬉しかった事は今でも忘れていない。