Classici giapponesi con furigana
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ぎせいしゃ
犠牲者
平林 初之輔
Leggi 犠牲者 (ぎせいしゃ) di 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.364 caratteri · 37 schermate
今村はぽかんとして、無感動な調子で「何ですか?」と訊きかえした。実際よくききとれなかった様子である。課長は、化学反応の実験がうまくゆかなかった時の理科の教師のように小首をかしげた。しかし彼はすぐに気をとりなおした。
「浅野護謨会社の小使を殺したのは君だろうというのだ」
課長は、相手を容易ならぬ強敵と見てとって、できるだけ冷静に言った。いくら隠しだてしたって、こちらでは何もかもわかっているということを犯人に強く印象させる必要のある時に彼が用いる態度である。
今村は、はじめて、自分が容易ならぬ嫌疑を受けているらしいことを自覚して、総身に水を浴びたように胴慄いした。そしてこれまでの自分の返事が、みんな自分の実際の気持ちを裏切って相手に不利に解釈されていることに気がついて底知れぬ不安に打たれた。課長に対する敬愛の心は、忽ち憎悪の念にかわった。唇は歪み、舌はひきつってとみに返事もできなかったので、彼はだまっていた。ところが彼がだまっていたのは、却って彼の図太さの証拠であると課長は判断してこういう場合にいつも用いる、息をもつかせぬ「急追法」をとった。
七、証拠