Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぎせいしゃ

犠牲者

平林 初之輔

Leggi 犠牲者 (ぎせいしゃ) di 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.364 caratteri · 37 schermate

Aozora Bunko

私は、硝子障子を一ぱいに開け部屋じゅうへ日光を直射させながら、二階の廊下へ足を投げ出して、はじめて波の音をきく人のように珍らしそうに、この自然の音楽にきき入りながら、うっとりとして寝ころんでいた。

その時に宿の女中が一枚の名刺をもって来た。「瀬川秀太郎」という活字は、すぐに私の心を自然に対する親しみから、人間に対する親しみへ引き戻した。私は三日の間、食事の時に宿の女中とお座なりの言葉を交すだけだったので、人間の肉声に渇していたのである。ことに、学校を出てから、この附近に小さい病院を開業している開業医でありながら、どこか神秘思想家の面影をそなえた瀬川は、此の際私の渇を医するには最も好ましい話相手であった。今度の事件が起ってからも彼とは一二度あっているのだ。私はチャブ台の前に端座して、来客を待っていた。

「浅野という男が死んだね」

瀬川は一わたり久闊の挨拶がすんでから、急に話頭を転換して言った。私には浅野という男が誰のことかとみには思い出せなかったので、

「はあ……」

とわかったような、わからぬような生返事をしていた。瀬川は衣嚢から一枚の東京新聞をとりだして、「静岡版」