Classici giapponesi con furigana
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
Leggi 犬田卯短編集二 (いちろうじん) di 犬田 卯 (いぬたしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.383 caratteri · 103 schermate
「どこサ行って来たか」と行きあった村人に訊ねられても彼女は、「あ、どこサでもねえ」と気抜けしたもののように答えたのであった。――ひょっとすると、持って出たつもりでも、持たずに出てしまったのか……彼女は庭先へ入って家の中をうかがった。――誰もいないでくれればいいが……だが、喘息気味で仕事を休んでいた母親が、すぐに見つけて土間から声をかけて来た。
「何だか。……どうしたんだか。」あまりに蒼い娘の顔に老母はびっくりしたのである。「あいよ、どうしたんだよ。腹でもいたいのか。」
「ううん――」とお通はそれを否定した。「おれ、さっき、出るとき、蟇口持って出たっけかな、お母さん。」
「蟇口失くしたのか。」
「無えんだけどな、どこを探しても……まさか途中で落したはずもあるめえと思うんだけど。」
「おいや、それでは持ったつもりで持たなかったかな。」
で、二人で家中を探してみた。つぎには庭先から往還まで、さらに畑道の方まで、坂の中途で母親はとうとう息をきらして道芝の上へ腰を下ろしてしまった。
「何だや、まア、どうかしたのかい」と訊ねる村人へ、彼女は正直に打ち明けた。
「お通がさっき蟇口失くしてなイ――」