Classici giapponesi con furigana
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こぶ
犬田卯短編集 一
犬田 卯
Leggi 犬田卯短編集 一 (こぶ) di 犬田 卯 (いぬたしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.259 caratteri · 96 schermate
眼をつむるようにして、足許だけ――ほんの自分が踏み出す四五センチ先ばかりしか見なかった。
ふらふらと定めない彼の足は、五歩、六歩と行くうちに、自然に調子が定まり、しかも、見よ! だんだんそれが速くなって、ほう、駈ける! 駈ける! 駈け出してしまったのだ、圭太は!
彼が駈けるにつれて、さぶちゃんはじめ、腕白どもも駈け出していた。彼らは意外だったのだ。圭太に駈ける度胸があろうとは誰一人考えていなかったのだ。さぶちゃんはじめ、奴が泣いてあやまるだろうとひそかに期待していたのだった。
圭太はもう夢中だった。顔の形相がすっかり変っていた。彼は何も見も思いもしなかった。そして次第に早く駈けて、流れの中央へまで行った時、彼は朽ちた欄干の上を踏みはずして、風のようにそのまま宙を飛んでしまっていた。
三
気がついた時、圭太は自分の前に、二三の女生徒が立っているのをぼんやりと認めた。
「あら、鼻血が出てるわ……まあ……」
一人の女生徒がびっくりしたような声で言った。彼女は袖から塵紙を出した。そして圭太の顔へかがみかかって、ぬらぬらする鼻の下や口のあたりを丁寧に拭ってくれた。