Classici giapponesi con furigana
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きょうげんのかみ
狂言の神
Leggi 狂言の神 (きょうげんのかみ) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.478 caratteri · 31 schermate
むごいことには、私、おどろく力を失ってしまっていた。私に就いての記事はなかったけれども、東郷さんのお孫むすめが、わたくしひとりで働いて生活したいと言うて行方しれずになった事実が、下品にゆがめられて報告されていた。兵士たちが望富閣の食堂へぞろぞろとはいって来て、あまり勢いよくはいって来たので私のテエブルをころがした。コップもビイルの壜も、こわれなかったけれど、たしかに未だ半分以上も壜に残っていたビイルが白い泡を立てつつこぼれてしまった。二、三の女中は、そのもの音を聞き、その光景を背のびして見ていながら、当りまえの様な顔をして、なんにもものを言わなかった。トオキイの音が、ふっと消えて、サイレントに変った瞬間みたいに、しんとなって、天鵞絨のうえを猫が歩いているような不思議な心地にさせられた。狂気の前兆のようにも思われ、気持ちがけわしくなったので、それでも、わざとゆっくりと立ちあがり、お勘定してもらって外へ出た。たちまち烈風。スプリングの裾がぱっとめくりあげられ、一握の小砂利が頬めがけて叩きつけられぱちぱち爆ぜた。ぐっと眼をつぶって、今夜死ぬるとわれに囁き、みんながみんな遠くへ去っていって、世界に私がひとりだけ居るような気持ちで、ながいこと道路のまんなかに立ちつくした。