Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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むじな

狢

田中 貢太郎

Leggi 狢 (むじな) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 828 caratteri · 2 schermate

Aozora Bunko

幕末の話である。

某商人が深更に赤坂の紀の国坂を通りかかった。左は紀州邸の築地塀、右は濠。そして、濠の向うは彦根藩邸の森々たる木立で、深更と言い自分の影法師が怖くなるくらいな物淋しさであった。ふと濠傍の柳の木の下にうずくまっている人影に気づいた。

どうやら若い女のようで、悄然と袂に顔をうずめて泣いているのであった。商人はてっきり身投げ女だと思った。驚かさないようにして女の傍へ寄って往った。

「どうかしたのかい、姉さん。狭い量見を起しちゃいけないよ」

女は顔もあげないでしくしくと泣きつづけた。商人は寄り添って腰をかがめた。

「ね、どうしたんだい。姉さん思案にあまることがあるなら、いくらでも力になってやるよ、わけを言って見な」

女はますます袂へ顔をうずめて泣き入るばかりであった。商人はじれったくなって女の肩へ手をかけた。

「どうしたのだ、姉さん、人が親切に言ってるのだ、わけを言ったらいいじゃないか」

女はひょいと袂から顔をあげた。それは目も鼻も何もないのっぺら坊であった。

「わ」

商人は一声叫ぶなり坂を四谷の方へ逃げあがった。あがったところに夜鷹蕎麦の灯があった。