Classici giapponesi con furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Leggi 猟奇の果 (りょうきのはて) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 134.971 caratteri · 270 schermate
絶えず背後に追手を感じながら、若しや芳江が帰宅していないかと、とうとう家まで来てしまったのだ。
思切って、ソッと格子戸を開くと、すぐ見覚えのある芳江の草履が目についた。ちゃんと帰っているのだ。
彼は何故か音を立てない様にして、玄関を上り、茶の間へ踏み込んだ。そこに立ちかけた芳江がいた。眼と眼を見合わせた二人の身体が、石になった様に、愛之助は立ちはだかったまま、芳江は片膝立てたまま動かなくなってしまった。
「お前いつ帰った」
長い後で愛之助が、吐息をつく様に云った。
「マア、あたし、どこへも出ませんわ」
芳江は何か幽霊でも見る様な、怖わそうな表情で、息をはずませて答えた。
「本当か。あくまで外出しなかったと云い張る積りか」
「あなたどうかなすったのじゃありません? あたし、嘘なんか云いませんわ」
芳江は例の不気味な無邪気さで、ぬけぬけと答えた。
愛之助は妻の驚嘆すべき技巧に打たれた。それはいっそ恐ろしい程だった。突然横面を殴りつけられた感じで、取りつくしまがなかった。
彼は黙って二階の居間に上ると、手文庫から銀行小切手と実印とを取出し、それをふところにねじ込んで、そのまま表へ出た。