Classici giapponesi con furigana
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ねこすてざか
猫捨坂
豊島 与志雄
Leggi 猫捨坂 (ねこすてざか) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.043 caratteri · 21 schermate
」
どこへ行けというのか。俺にだけ言ってる言葉ではあるまい。病苦の中にある母に向っても、看病疲れの姉に向っても、あのタンクの中に焼け爛れる死骸に向っても、それは言ってるのであろう。世の中に向って、世界中に向って、言ってるのであろう。
姉の手が俺の膝をつっ突いた。それから姉は母の眼を指差した。
その眼はまだ見開いたままである。
「どうしたんでしょう。」
泣くような低い声だ。俺は沈思の中で身じろぎもしなかった。姉は母の方へ顔を寄せた。
「お母さん、どうしたの。」
母は事もなく頷いて、そして眼を閉じた。瞼がすっかり落ち窪んで、よく合さらず、薄目を開いてるようである。頬骨が高くなり、鼻が尖り、唇もかすかに開いている。耳の後ろにはもう全然肉がない。
「眠りなすったようね。」
姉はつぶやいて、太い息をつき、手枕で上体を横たえた。
どうせ助からない病人とは分っていたが、数日前から急に悪化して、食物も殆んど喉を通らなくなった。始終むかむかして嘔気があり、臭いおり物には殆んど自覚がなく、時折、疼痛を訴える。その側に、姉は炊事以外は付ききりなのである。姉自身も痩せて、顔色がくすんできた。