Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ねこすてざか

猫捨坂

豊島 与志雄

Leggi 猫捨坂 (ねこすてざか) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.043 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

せめて半夜交代にでもしようと俺が言っても、姉は承知しない。最後まで自分で看病するつもりなのだ。おむつの世話は男には無理だと言う。病室内の異臭ももう身について、いっこう気にならないらしい。

病室は四畳半。次の六畳に、姉の夫と二人の子供とが寝る。夫はその職場に時間外の居残り勤務までやって、一家の生活費を一人で稼ぎ出さねばならない。母が病臥して以来、彼の体にも無理がたたって、めっきり老けてきた。二階にも一家族、貧しい人々がぎっしりつまっている。至るところ人間臭い筈だが、体臭よりむしろ埃臭く垢臭いのだ。泣くのは子供たちだけで、大人たちは心から笑うことさえもない。

ただ一度、姉が泣いてるのを俺は見た。母のおむつを洗ってるところへ、近所のお上さんが来て、大声で言った。

「たいへんですねえ。大人の赤ちゃんのお世話は、骨が折れるでしょうね。」

そのあとで姉は、縁先でしくしく泣いていた。お座なりの同情にセンチになったのではあるまい。あるいは皮肉を口惜しがったのでもあるまい。母がまるで赤ん坊のように垂れ流しになったことが、悲しかったのであろう。しくしく泣いていて、どうにも涙が止らない様子だった。